G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

29 2022 vol.12 G&U 存ストックの状態を把握するた めの調査業務です。 「MMSは膨大な量のマンホー ル蓋を広範囲にかつ効率的に把 握できることから、計画策定の迅 速化にも貢献しています。具体的 には、詳細な調査を行う前段階に あたるスクリーニングで蓋タイ プ等を調査することが多いです」 従来は、1ヵ所ずつ調査員が 蓋を撮影していましたが、MMS は日進距離が約35km、既設の 蓋数で言えば、約1000基を一気 に撮影できます。蓋の撮影にお いては、表面がはっきり写るよ う、車両に追加カメラを取り付 け、あらかじめ撮影する地区を 決めれば、そのエリアの蓋を数 日で撮影することも可能です。 従来手法と比較すると、より短 期間で蓋のタイプや状態を把握 できます。加えて、計測データ には、位置情報が紐づけられる ため、蓋のタイプ別分布図など の作成に生かせるほか、台帳シ ステムへの施設情報の反映など 利活用法は多岐にわたります。 事業体側の要望に応じて、蓋 のタイプの他にもクラックや欠 け、浮き沈み、周辺舗装のクラッ クを併せて調査するケースもあ ります。そのほか、計測データは、 3次元での可視化も可能です。 部局を超えた一体的調査実施を AIによる自動判別技術も開発へ MMSは、同様の機器構成で 蓋と道路を同時に調査できる段 階まで進化しています。しかし 事業体では、予算編成の都合等 の理由で、別々に調査されるこ とが多いです。 「平成28年に策定された国土 交通省道路局の舗装点検要領で は、5年に1回の舗装点検が推 奨されています。今後は、この 点検に合わせて、蓋も一括して 調査できるような案件形成や提 案を進め、調査コストの縮減や 効率アップにつなげていきたい と考えています」 近年は道路側溝の調査への応 用も検討しています。MMSは、 側溝の様子も捉えられるため、 詰まりの有無なども計測データ からAIにて判定できる可能性 があります。実現すれば、内水 氾濫解消に向けた取り組みでも 活用できる技術となります。 蓋の調査をさらに効率化する 取り組みとして、AIでの劣化判 定の自動化技術の開発にも取り 組み、さらなる維持管理の高度 化を目指していきます。 一方でMMSは、歩道に設置 された蓋の調査などに課題があ ります。 「歩道の蓋の撮影が特に難しい です。最近は、都市部の緊急輸送 路や高規格道路の歩道を調査す る機会が多いです。しかし植樹 や人通りが多く、対象がその陰 に隠れるため、必ず撮影できる ものとは限りません。歩道のほか に、狭い道路など車両が運用で きない場所では、あまり強みを 発揮できません。これらのケー スを踏まえ、近年は一般車両の ドライブレコーダーやスマート フォンのカメラ画像など、ビッグ データから必要な情報を抜き出 し、計測データを補完する研究 にも取り組み始めたところです」 ▲計測データの3次元可視化のイメージ ▲マンホール蓋調査用車両の追加装備 ▲車載カメラによる蓋の種類・分布の判読イメージ

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