G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

17 2022 vol.12 G&U 価で法定の処理費用に上乗せすることが、資産を 適切に維持するためには必要だと考えています。 料金徴収業務や広域連携の推進にも活用 あらゆる業務に対応する水道DX 水道事業の基盤強化にあたっては、ハードだけ でなく、ソフトの視点も極めて重要です。とりわ け大事なのが料金徴収です。地方公営企業会計の 基本的な考え方として、水道事業は費用の100% を水道料金で回収する必要があるからです。給水 する水量と料金として収入のあった水量の比率を 表す「有収率」という指標では、日本は全国平均 で90%強と世界的にも非常に優秀ですが、水道情 報活用システムによって、料金徴収業務を共通化・ 高度化することも可能です。他のDX技術として、 遠隔で自動検針できるスマートメーターの普及も 進んでいます。スマートメーターで取得した情報 と水道情報活用システムとの連携も期待されます。 水道情報活用システムの活用例としては、広域 連携も挙げられます。行政区域を越えた広域連携 は水道事業でも大きなテーマとなっています。改 正水道法の柱の1つにも位置づけられましたし、 令和4年度末までにすべての都道府県で「水道広 域化推進プラン」を策定することが要請されてい ます。例えば石川県では金沢市を中心とした広域 都市圏構想が動いており、上下水道事業でも広域 連携に向けた検討が進んでいます。金沢市企業局 では水道情報活用システムを導入し、管路も含め た施設の更新や最適化、今後の広域化を図る方針 を決めており、周辺の市町もそれに影響を受けて 導入の機運が高まっている状況です。圏域水道一 体化をめざしている奈良県でも、奈良市企業局が リーダーシップをとって水道情報活用システムの 導入を進めているところです。広域連携を推進す る上では、水道情報活用システムを使うのが最も 手っ取り早く、有効な手段の1つだと考えていま す。 水道情報活用システムでは、あらゆる業務を全 方位的に共通化・標準化しようということを当初 からの理念としています。この考え方は、当面は 台帳電子化の促進に焦点をあてる下水道共通プラ ットフォームとは異なる点かもしれません。 重なる業務領域=今後の官民連携のあり方 コーディネーター役の育成といった課題も 民間企業への期待として、改正水道法のもう1 つの柱である「官民連携の推進」についても述べ たいと思います。公共部門は人が不足しているの で官民連携に頼るしかありません。以前より公共 と民間の業務領域には重なっている部分がありま したが、これがここ数年で急速に広がっています。 このクロスしている業務領域が「今後の官民連携 のあり方」を示していると思います。 しかし官民連携を進める上で、日本には官と民 をマッチングさせるコーディネーター役がいない という課題もあります。例えば英国では「プラン ナー」という専門的な資格があります。都市計画 において総合的なプロデュースを行う職種で、ド ックランズと呼ばれるロンドンのテムズ川沿岸の 再開発などに大きな役割を果たしました。日本で もこうしたコーディネーター役を担う専門家の育 成が今後は必要になってくると考えています。 DXの普及・促進は、官民連携を推進する上でも 欠かせないものです。民間企業にとっても大きな ビジネスチャンスになりうると思っています。 P R O F I L E【いしい・はるお】 東洋大学で博士号(経済学)取得。(財)運輸調査局主任研究員、中央 大学経済学部兼任講師、ブリティッシュ・コロンビア大学客員研究員、 ノルウェー交通経済研究所客員研究員、参議院運輸委員会調査室客員 調査員、作新学院大学教授などを経て、平成18年4月より東洋大学経 営学部教授・同大学院経営学研究科教授。31年4月より現職。群馬県 前橋市出身。

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