G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

16 2022 vol.12 G&U Close UP Part 2台帳システムの構築に向けて 来の対応を考える材料にもなります。また、ベン ダーロックインの解消や、割り勘効果によるコス トの低減も謳われています。いずれも実現に向け てはなかなかハードルの高いテーマではあります が、こうしたメリットの創出も念頭に置きながら システムの活用が広がることを期待しています。 経営基盤の強化がテーマの改正水道法 適切な管理へ、「資産維持費」も重要な概念 平成30年に改正された水道法では、水道事業を 未来永劫持続させるため、「基盤強化」を全面的 に打ち出しました。さらに、この大きなテーマに 基づき、「適切な資産管理の推進」「官民連携の推 進」「広域連携の推進」の3つの柱を位置づけま した。このうち「適切な資産管理の推進」の具体 的な施策が、台帳作成の義務化にあたるわけです。 適切な資産管理には「資産維持費」という新た な概念を取り入れることも大事になります。資産 には耐用年数がありますが、これは試験研究機関 などの英知を結集して決められるもので、最先端 技術を踏まえ改正されることもあります。日本の 税制や会計制度は、資産を取得した時点の価値で 評価する「取得原価主義」に基づいています。資 産の取得原価を使用期間にわたって費用として配 分する会計的な処理が減価償却です。 例えば下水道のマンホールふたの場合、車道に 設置されたものは耐用年数が15年に設定されてい ますが、15年後には交換できるよう費用を積み立 てていくのが取得原価主義に基づく減価償却の基 本的な考え方です。ただ、時代の変化は激しく、 マンホールふたの材質等も変わっていきます。現 時点で購入したマンホールふたを15年後に同じ価 格で購入できるかというと購入できないと思いま す。ふたの安全性も材質も向上しているでしょう し、自動開閉も実現しているかもしれません。コ ストが上がっていると考えるのが一般的だと思い ます。この15年間で予見できるコスト増の部分が 「資産維持費」にあたります。取得原価に対し、カ レント・コストと呼ぶこともあります。 資産維持費をめぐっては、私が委員長を務めた 日本水道協会の「水道料金制度特別調査委員会」 が平成20年に答申をまとめ、資産維持費3%の導 入を位置づけました。日本下水道協会でも、平成 28年に改定した「下水道使用料算定の基本的考え 方」の中で資産維持費の概念が盛り込まれていま す。工業用水道は下水道より数年早く、省令の改正 が行われ、資産維持費の考え方が導入されました。 こうした背景を踏まえつつ、資産維持費を総括原 ▲「水道情報活用システム」の導入状況(令和4年2月時点。出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/content/000942302.pdf) 18府県・37事業者が導入事業実施(令和4年度登録事業者含む)、27道府県・64事業者が導入を検討中(令和5年度以降) 都道府県 事業者名 用供 宮城県 蔵王町 福島県 浪江町 栃木県 宇都宮市 富山県 射水市 石川県 金沢市 石川県 津幡町 長野県 箕輪町 岐阜県 笠松町 愛知県 岡崎市 滋賀県 草津市 滋賀県 大津市 滋賀県 長浜水道企業団 滋賀県 愛知郡広域行政組合 京都府 綾部市 京都府 宮津市 京都府 与謝野町 兵庫県 宝塚市 兵庫県 淡路広域水道企業団 兵庫県 神戸市 兵庫県 姫路市 導入を検討中 (4 募集登録) 導入事業実施 (43開始含む) 都道府県 事業者名 用供 奈良県 奈良市 奈良県 生駒市 奈良県 奈良市企業局都祁上水道事業 奈良県 奈良市企業局月ヶ瀬簡易水道事業 奈良県 平群町 島根県 島根県 広島県 広島水道用水供給事業 ● 広島県 広島西部地区水道用水供給事業 ● 広島県 沼田川水道用水供給事業 ● 福岡県 直方市 福岡県 桂川町 佐賀県 佐賀市 佐賀県 佐賀東部水道企業団(水道事業) 佐賀県 佐賀東部水道企業団(用供事業) ● 佐賀県 佐賀西部広域水道企業団 大分県 大分市 鹿児島県 鹿児島市

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