38 2025 vol.14 G&U Report 令和6年能登半島地震 こちで林立するような状況にはならなかった のではないでしょうか。 急所施設がはらむリスク 小川 一方で、いわゆる“急所”となる施設が 被災し、下水道システム全体が支障をきたし たエリアがありました。能登地方の下水道の 特徴の一つは、汚水を下流でいったん集めた 後、上流側の処理場にポンプ圧送している施 設が多いことです。その圧送管が破断などで 使えなくなると処理ができなくなるとともに、 下流では溢水の恐れが生じます。 ただ、地震発生後しばらくはそうした地域 の多くは断水していましたし、住民の大半は 避難していたので、汚水が増えない状況でし た。ごくまれにマンホールから水があふれた という報告があっても、すぐ日本下水道管路 管理業協会さんに連絡し、バキュームカーで 吸い取ってもらうことで対応できました。 山上 地表面に出てきた下水のバキュームは 支援室の立ち上げ以降も都度、6月くらいま で見受けられました。取付管が割れたり、接 合部に隙間が空いたりした汚水管に雨水や地 下水が入り、混ざって薄まった汚水があふれ ることもあったと考えています。 マンホールの横ずれ発生 ――対策検討委員会の報告書によれば、マン ホールの被害は石川県だけでも浮上(写真2) が4203基、破損が1472基、ずれが1055基と、 件数としては非常に多くなっています。現場 の感覚としてはいかがでしょうか。 小川 マンホールは必ずしも地盤と同じよう には動かないので、地震動で横ずれが生じた り、縦ずれによって管きょとの接合部が破損 したケースが多かったのだろうと思います。 浮上についても高さはさまざまでしたが、20 ~30cm程度浮き上がっている箇所は多数あ りました。そういったところは車両通行の妨 げになるので、隆起した部分をカットするこ とで対応しました。 山上 4月時点で、車両通行に支障となるよ うな隆起したマンホールのカットと修繕は順 次進められていましたが、傾いたマンホール の蓋は非常に開けにくく、2次点検や堆積土 砂清掃などメンテナンスでずいぶんと苦慮さ れていました。受枠がずれているのか、蓋の まわりから雨水が入りやすくなった箇所もあ ったようです。海の近くや埋立地のような地 下水位が高い地区では、マンホールと横管の 接合部に隙間ができ、浸入水があったことが 明らかになっています(写真3)。 そうしてマンホールに入った水をバキュー ムカーで排除する場合(写真4)、ものすごい 量を吸い出すことになるのですが、滞水を排 除しないことにはカメラ調査ができません。 災害復旧費適用を受け、管きょの修繕を行う ためには事前のカメラ調査が必須になってい るので、バキュームが追い付かず、難儀しな がら対応している場面も目にしました。 ――蓋の開閉といえば、過去の災害で応援に 入った自治体から、自治体ごとの開閉方法の 差に苦労したと聞いたことがあります。 小川 今回はそれぞれの被災自治体に政令市 の支援が入っていたので、そのあたりは過去 の経験も踏まえて、あらかじめ調整していた だいたようです。県庁の現地対策本部にも、 写真2 珠洲市でのマンホールの浮上 (写真提供:国総研)
RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz