G&U技術広報誌vol.14

3 2025 vol.14 G&U 工に用いることは、耐久性や長寿命化を考え ると、私は少し違和感を覚えます。 二次覆工一体型は、無筋コンクリートの部 分にも地山の荷重がかかるため、曲げひび割 れの発生が避けられません。下水道管きょで はこのひび割れの存在が腐食の進行に大きく 関わるからです。下水は清水と違って汚水で すので濃度があり、 微小なひび割れでもその 中に入り込む水は濃度差によってつねに入れ 替わります。下水道内に発生した硫化水素が 硫酸に変化してひび割れに入ると、コンクリ ートを内部からボロボロにしますし、また、 ひび割れが鉄筋位置まで達していれば鉄筋も 腐食します。 昔は下水道では小口径のものが多いという こともあって、 鋼製セグメントが多く使われ ており、コンクリートで二次覆工を行うのが 一般的でした。二次覆工は、地山の荷重で変 形した後にセグメントの内側に施工するため、 荷重を直接受けないことからひび割れが発生 しにくいのです。もちろん二次覆工コンクリ ートも腐食はしますが、厚さもかなりあるの で、 腐食が内部に達するまでには相当な時間 がかかります。腐食を遅らせる上で、二次覆 工には大きな意味があります。 このように、下水道管きょの中には濃度を もつ液体が流れているため、ひび割れが腐食 に大きく影響しています。しかし現状では、 このひび割れの幅がどの程度までなら許容で きるのか、どの程度の幅を超えると腐食の進 行に大きな影響を与えるのか、という検証が まだきちんと行われていません。下水道の耐 久性を考える上で非常に重要な事象ですから、 この解明に取り組むことが喫緊の課題だと感 じています。 下水道は「道」という広い視野を ストマネ・アセマネ実践の端緒として 下水道関係の委員会に参加すると、メンバ ーの多くは水処理分野の専門家が占めていま す。しかし、下水道は処理がすべてではない し、管きょをもっと大切に考えてほしいと思 います。私が一番言いたいのは、下水道は「道」 だということです。管きょという道には必ず マンホールがあり、そこにはマンホール蓋も 必要で、処理施設も含めてこれらが全部そろ って初めて「下水道」と呼べます。下水道の長 寿命化は、下水道というシステムを全体とし て考えなければならないはずです。ほかが健 全でも、ポンプ場1ヵ所、管きょ1本が壊れ れば下水の流れが止まって処理ができなくな ります。 一つのシステムとして下水道を見ると、マ ンホール蓋はごく小さなものですが、管きょ の重要な一部であることは確かです。しかし、 マンホール蓋には膨大なストックがあり、15 年性能の蓋だとその耐用年限を超えた蓋が相 当数に上り、 損傷した蓋の事後対応が追いつ いていない現状です。 今回発刊された新マニュアル「アセットマ ネジメントの実践に向けた次世代型マンホー ル蓋の技術マニュアル」に沿った30年性能を 有する蓋が広まれば、事後対応にも多少は余 裕が生まれるでしょう。その生まれた余裕の 中で、しっかりストックの状態把握、情報管 理を行い、事後保全的対応から予防保全的対 応へと転換していただくことが重要です。下 水道は連続した一連のシステムです。マンホ ール蓋だけでなく、管きょ全体、下水道シス テム全体までを意識した適切なストックマネ ジメント、さらにはアセットマネジメントへ の実践につなげていただけるように期待して います。 P R O F I L E【こいずみ・あつし】 昭和45年早稲田大学理工学部土木工学科卒業後、昭和54年同大学 院で工学博士を取得。平成30年早稲田大学教授退職後、同年名誉 教授に。専門は地盤工学やトンネル工学など。現在は企業との共 同研究や技術指導に加え、多くの技術委員会で要職を務める。 下水道は「道」という広い視野を

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