2 2025 vol.14 G&U 内部から腐食する下水道の特殊環境 事前の内面被覆は耐久性向上に有効 下水道管きょの長寿命化技術について考え るとき、まず、電力、通信、鉄道、道路など の一般的なシールドトンネルと下水道トンネ ルとの大きな違いは、外部からの漏水で腐食 するか内部の流水によって腐食するか、とい う点です。同じ流水でも水道や放水路などの 管路であれば清 せい 水 すい に近いものが流れています が、下水道管きょは、中を流れるのが有機物 を含む汚水であるため、発生する硫酸などに よって内部から劣化が進行することが一番の 特徴です。 一般のシールドトンネルでは、セグメント の継手やひび割れからの外部からの漏水で劣 化が進行します。もちろん下水道でも外から 浸入する水はありますので、これによる劣化 は問題になります。さらに、このような水は 下水処理に余分な負荷をかける料金が取れな い水になります。下水道の管きょは外部から の漏水による腐食に加えて、 内部からの腐食 も受ける特殊な環境に置かれています。 防食という点では、一般のシールドトンネ ルは基本的に内側からの腐食を想定していま せん。しかし、 セグメントの中には内面に鋼 材が多く露出する仕様のセグメントもあって、 それらは鋼材の部分に重防食処理がされてい ます。鋼製セグメントや合成セグメントなど 外面側が鋼製のものは、腐食で想定される減 肉量として100年で1mm程度の腐食しろを 考慮して製作されています。 下水道を「道」と考えて、管きょの長寿命化 を図るには、たとえば、あらかじめ樹脂系の 材料などで被覆しておき、内部からの腐食に 備える方法が考えられます。実際、都内の下 水道幹線では建設当初から更生工法のように 内面被覆を行った事例もあります。そのよう な事前の腐食対策は、初期コストはかかりま すが、耐久性を向上させる上で非常に有効な 方法ではないでしょうか。 腐食進行を加速化する管体のクラック メカニズムの科学的検証が今後の課題 近年は下水道シールド工事で「二次覆工一 体型セグメント」と言われるセグメントが多 く使われるようになりました。これは、 セグ メントの内面側に防食層として無筋コンクリ ートを50mm程度盛って一体化することで、 二次覆工の工程を不要にしようとしたセグメ ントです。しかし、これを下水道管きょの施 早稲田大学 名誉教授 小泉 淳 氏 下水道は「道」という 広い視野を ―下水道管きょの長寿命化技術― 巻頭言
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