G&U技術広報誌vol.14

17 2025 vol.14 G&U 大雨に伴うマンホール蓋の被害状況と安全対策の現在 30m)、老朽化対策の推進のためにも、より正 確に現状を把握しようという取り組みです。 調査方法は国土交通省から全自治体に毎年 依頼している調書に項目を追加する形で、内 容は蓋の設置数・設置年度と口径、そして蓋 に起因する事故の発生状況です。項目は最低 限に絞り込んでいますが、中には台帳にマン ホール蓋に関する項目がなく、データを持っ ていない自治体もあると聞きます。初めての 試みですので、ご協力いただける範囲で情報 を集めたいと考えています。 また、マンホール蓋のアセットマネジメント に積極的な都市へのヒアリング調査も行って います。ある都市では、膨大な数の蓋を一つ ずつ確認するのは現実的でないので、「古い蓋 が多いエリア「」傾斜が大きく蓋の飛散が起き そうなエリア」というように重点対策地区を決 め、面的に順次取り替えを進めていると聞き ました。そのあたりの実情も把握できたらと 思っています。 調査結果はなるべく早く取りまとめて公開 できればと考えています。例えば設置年度と 事故の関係が明確になれば、先ほどの「安全対 策の手引き(案)」と同じような“境目”が見つ かるかも知れません。可能性としては、過去の 規格制定や改正の影響があるかも知れません。 そういった影響が明確になれば、より精緻な 安全対策が検討できると考えています。 住民との接点、なればこそ安全対策を ――調査や研究を通じて、マンホール蓋にど んな課題を感じていますか。 やはり老朽化の進行です。錆びて枠と固着 すると、蓋は本来の機能を発揮できません。 先のアンケート調査では、圧力解放蓋でも約 10年間で30件程度の被害が発生していました。 蓋が想定通りに浮上せず、圧力を解放できな かったとすれば、その要因は食い込み過剰、 または腐食による固着だと考えられます。 その点、最新の次世代型圧力解放蓋は腐食 対策が強化されたと聞きました。可能ならそ うした高性能な、新しい蓋に取り替えていた だくのが一番です。 また、蓋自体が耐圧性能に優れていても、 周りの部材が弱ければそこから被害が生じる おそれがあります。安全対策を検討する際は、 構成部材全体に留意する必要があるでしょう。 更新の一方で、日頃の点検・維持管理も大 切です。全部の蓋を更新するには数十年単位 の時間がかかるでしょうが、大雨は待ってく れないので、しっかり点検しながら優先順位 を検討し、必要なところから取り替えていく ことが重要になってきます。 そこで安全対策検討フロー図(案)を活用 していただきたいのですが、フローどおりに 実行するには流出解析が必要になるので、少 しハードルが高いとお感じになる自治体の方 もおられるかも知れません。簡易判定表だけ、 あるいはリスクマトリクスの考え方だけを活 用することも可能ですので、ぜひご検討くだ さい。 ――最後に、自治体へのアドバイスをお願い します。 マンホールだけに絞った計画を新しく作っ たり、事業を始めたりするには難しい部分も あろうかと思います。その意味で、管路施設 の整備計画やストックマネジメント計画、雨 水管理総合計画、雨天時浸入水対策計画とい った各種計画を策定するときに、併せてマン ホールの安全対策を検討するというやり方も あるのではないでしょうか。 ほとんどが目に見えない下水道施設の中で、 マンホール蓋は住民との数少ない日常的な接 点です。PRに活用するのも有効ですが、住民 の方々の安全に直結する存在でもあるので、 ぜひ安全対策にも目を向けて、積極的に取り 組んでいただきたいと考えています。 ――ありがとうございました。 P R O F I L E【やすだ・まさひろ】 平成15年3月東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。同 年4月国土交通省入省後、30年4月京都府環境部水環境対策課長、 令和3年7月国際協力機構インフラ技術業務部主任調査役、4年 6月国交省水管理・国土保全局下水道部下水道企画課企画専門官、 5年4月日本下水道協会DX調査研究担当部長・企画部情報課長、 6年4月より現職。神奈川県出身。

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