15 2025 vol.14 G&U 大雨に伴うマンホール蓋の被害状況と安全対策の現在 蓋の種類(表1)と被害内容の関係を見て みると、飛散した蓋の多くは平受蓋でした。 これは圧力を逃がすための蓋の浮上機能がな かったか、あっても一定の位置で止める力が 弱かったか、そのあたりが原因かなと思われ ます。一方、舗装の破損は勾配受蓋のマンホ ールに多く見られました。食い込み力が強い だけに、錆びなどで固着して蓋が外れなくな り、周辺の舗装ごと浮き上がったのではない かと考えられます。 実際の被害から解析モデルを構築 ――調査結果はどう活用されたのでしょうか。 被災メカニズムを踏まえた「危険度簡易判 定表(例)」(表2)を作成した上で、各マンホ ールの安全対策を検討するための「安全対策 検討フロー図(案)」(図3)をまとめました。 先ほどの「安全対策の手引き(案)」でも危険 地点や優先度の判定表が示されているのです が、より定量的な判断基準を設定しています。 基準作りにあたっては、大雨時におけるマ ンホール内の流出解析を行い、その結果を活 用しました。流出解析については、被害を受 けた自治体にご協力いただき、管路施設の配 置や当日の降雨などを踏まえつつ、マンホー ルの被災状況を再現した解析モデルを構築し ました。その中から妥当性が確認できたモデ ルを使い、マンホール間隔や管きょ口径など の構造条件を変えながら、5年確率降雨(= 5年に1度の確率で発生する大雨)が降った 場合の内圧を算定したという流れです。 組立マンホールの水密性能を判断基準に 一方で、マンホール蓋の耐圧力についても 分析を行いました。どの程度の内圧がかかっ たら「蓋の飛散」「舗装の破損」「浮上」が発生 するのかということです。 舗装の破損は、蓋から十分な排気がなされ ていない状況で内圧が高まり、マンホールの 隙間から空気や水が漏出することで生じると 考えられます。組立マンホールの部材接合部 には一定の水密性能が求められている(日本 下水道協会規格より)ため、その値を超えた ときにリスクが高まると判断し、基準として 採用しました。 以上の流出解析と判定基準を組み合わせて 作った危険度簡易判定表(例)では、4項目の 構造条件を点数化し、合計点数が360点を超 えた場合に「危険」と判定します。もちろん合 計点数が高いほど危険性も高くなります。 優先順位に沿って適切な蓋への取り替えを 実際には、マンホールは非常に数が多いの で、優先順位を付けた上で対策を進めること になろうかと思います。そこで作成したのが 表1 マンホール蓋の種類及び概要 表2 危険度簡易判定表(例) 排気口 排気桝 排気管 マンホール 浮上防止用自動錠 排気・排水 圧力 蝶番 上段勾配面: 過剰な食い込 み力を抑制 下段勾配面: がたつきを防止 蓋 枠 蝶番 浮上ロック 自動錠 (裏面) 種類 図 概要 勾配受蓋2) くさび効果で、蓋の外周と枠 の内部とが傾斜接触面でかみ 合い、蓋が枠に食い込むもの。 がたつき防止が可能。 圧力解放 蓋1), 3) 勾配受蓋に浮上防止用自動錠 を設けることで、圧力が作用 したときでも蓋が飛散せず圧 力を解放するもの。 次世代型 圧力解放 蓋4) 圧力解放蓋の勾配受部分を改 良し、「食い込み制御」と「が たつき防止」とを両立させた もの。0.1MPa以下でマンホー ル内の圧力を解放できる能力 を有する。 格子蓋 蓋が格子状になっていて、排 気量を確保しやすい構造にし たもの。 排気口1) 必要な排気量がマンホールの みでは確保できない箇所で、 排気管及び排気口を設け、排 気量を確保するもの。 小 空気圧 大 マンホール間隔 50m 100m 150m 200m 400m 40点 100点 170点 400点 745点 マンホール蓋の 空気孔面積 100cm2 50cm2 10cm2 5cm2 0cm2 5点 15点 100点 130点 455点 管渠の口径 1000mm 1500mm 2000mm 2800mm 3600mm 10点 30点 60点 75点 100点 管渠の接合 管頂 管底 100点 150点 判定 合計 点 基準点数 360 点 1) 日本下水道協会「下水道マンホール安全対策の手引き(案)」(1999年3月) 2) 日本下水道協会「下水道施設計画・設計指針と解説 前編 −2019年版−」 (2019年9月)§4.3.4.マンホールふた 3) 日本下水道協会「日本下水道協会規格 下水道用鋳鉄製マンホールふた (呼び300~900)JSWAS G-4-2009」(2009年3月) 4) 下水道新技術推進機構「次世代型マンホールふたおよび上部壁技術マニ ュアル」(2007年3月)
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