G&U技術広報誌vol.14

マンホール蓋の課題 近年の豪雨被害と対策 13 2025 vol.14 G&U ため池は今も全国に21万箇所ありますが、台 帳が整備されていなかった。そこに、ため池 がらみの事故が起きたり、台風や豪雨でため 池が決壊してその水に、最近でも、何人もの 人がのまれています。そこで国は、全国規模 でため池台帳作りを進めているところです (ため池の防災・減災に活用可能な補助事業。 令和6年4月農林水産省農村振興局)。 台帳作りには相当なエネルギーが必要で、 今あるため池ですら全部は確認できていませ ん。ということは、その文書が、もう役所の どこにあるのか分からない状態なのでしょう。 台帳作りは国の予算を使ってエイヤでやる。 国の大きな予算がドンとつけば、そこでみん なで一斉にやるようになります。マンホール の蓋は、ため池の数に比べてもっともっと多 いわけですが、全国一斉にという機運が盛り 上がれば、意外とこの問題は早く片付くのか も知れませんね。 自治体レベルでは無理です。国が台帳整備 事業といった形で、いまやっている危険ため 池の把握、危険用水路の把握から、危険マン ホールの全国規模の把握といった流れになる といいですね。 お金があれば改築、そして台帳化 お金がなければ啓蒙を ――自治体の皆様へ先生からのメッセージを。 お金が来てからやるものと、お金が来てい ないうちにやれるものがあります。 お金が来てからやるものは、当然マンホー ルの実体把握、それから老朽化マンホールの 蓋の交換、それらを記録した台帳の電子化で す。図面だけ残しておくのではなくて、後に なってすぐに検索できるようにしておくこと。 電子化されていないことがこれまでの台帳の 一番の問題点だったので、この際きちっと進 める。 一方、お金がない時分にやれることはとい うと、情報提供です。マンホールがどうなっ たら危険なのかといったことを知らせます。 もともと穴が開けられているマンホール蓋な ら大雨で臭いが湧き出てきたら、それは水が 噴き出す前触れだとか。蓋からカタカタ音が 鳴りだしたらすぐに避難しないと、一気に道 路が冠水する、それが始まる合図なんだと。 また一方でカタカタ音がして、一方で音がし ないのは、単に固着しているだけかも知れな いので、早くその場から離れましょうと、そ ういった啓蒙です。この異常は何々の合図で、 マンホールを見ると、今どれくらいの危機が 迫っているかが分かるみたいな。そういう情 報を日頃から住民に伝えて欲しいですね。 また、先ほどもお話しした近所のマンホー ルを写真にしてデータベース化するというの も、なかなか良いアイデアなので、いろんな ところで取り組んでもらえるといいですね。 ――ありがとうございました。 P R O F I L E【さいとう・ひでとし】 水難学者・工学者。1962年生まれ。本職の専門は材料工学で、ペンシルベニア州 立大学博士研究員、茨城大学工学部助手、長岡技術科学大学講師、助教授を経て 2002年から教授。1986年より日赤水上安全法指導員として水難救助法の普及に努 める。これが水難学の創設につながった。水難学会では2011年より10年間会長を 務めた。現在、長岡技術科学大学大学院教授、一般社団法人水難学会理事。

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