Prologue 下水道事業とマンホール蓋における課題 12 2025 vol.14 G&U 落ちる危険性が残るので、両方を蝶番で留め て、人間がしっかりと道具を使わない限り開 かないというタイプです。 これは蝶番みたいなもので蓋を抑え込むの で、今度は圧力が抜けなくなります。それで、 圧力を抜かすために、わざと遊びを作って、 ガタガタ言わせながら中の空気を抜く蓋が作 られました。 またマンホール蓋自体にも穴を付けて、そ こから空気を逃がすものもあります。これは 臭いが出てくるので、蓋の下には、臭気をで きるだけ外に出ないような工夫もされていま す。 こうしたいろいろな工夫はあるのですが、 穴のせいで臭いがしたり、蓋から水が噴き出 すと、メディアが来て喜んだように写真を撮 ったり「これは何なんだ」と言ったりするわ けですが、すべて安全対策なんです。 転落防止の点では、人が穴に落ちないよう に、入り口にはしごを置くという工夫もあり ます。これは下に降りる階段の役目と同時に、 吸い込まれることを防ぎます。良い対策です ね。普及も進んでいます。 かく言う私ですが、実はまだマンホールに 入ったことがなくて。最後はやはり、そこま でやらないといけないと思っています。 というのも、先日相模原で、下水管の中で 作業中に流された事故がありました(2024年 9月)。あれもひとつの水難事故です。 吸い込まれることへの対策は進んでも、中 から外へ出る対策、つまり中に入っている作 業員が短時間のうちに外に避難するという対 策は取られていないという現状ですね。こう したことにも取り組んでいきたいと思います。 取り替えるべき危険なマンホール蓋が どこにあるのか分からない ――そうした技術や工夫があれば、安心、安 全ですね。 そう言えるための大前提は、全てのマンホ ール蓋が、いまお話ししたような安全対策が なされているということです。しかし、現状 は全国の20%が置き換わっていません。 さらにその安全対策のないマンホール蓋が どこにあるのかが、分かっていないのです。 分かっていればすぐに取り替えるはずですが、 未だにマンホールの蓋が吹き飛ぶわけですか ら。大都市ならすべて置き換わっているかと いうと、そうではなかった。どのマンホール の蓋がいきなり開くのか、それが分からない ということが、今、一番の問題です。 国の予算で台帳整備を――蓋とため池は 似ているかも知れません 自治体には、本来、蓋を把握するための台 帳はあるはずですが、何といっても、全国で 1600万基とも言われるもの凄い数なので、一 個一個チェックしきれません。それである自 治体は“自分の近所のマンホールを写真に撮 って送ってください”運動みたいな。写真を 見ればすぐに分かるので、いつ設置されたの か不明な蓋を少しでも減らしていくような対 策が望まれます。 ――そこを打開するには、先生は、どのよう にお考えですか。 台帳がない状況は、ため池と似ています。 転落防止を考慮した蓋。万一蓋が空いたままになっても、 入り口に梯子を置くことで人が吸い込まれないようにし ている(斎藤秀俊教授撮影)
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