マンホール蓋の課題 近年の豪雨被害と対策 11 2025 vol.14 G&U 最近も蓋が飛散している事例がありますが、 今後もまだまだ続くのではないでしょうか。 飛散による二次災害にも相当気をつけなく てはいけません。 圧の逃げ道を。最も危険なのは蓋の固着 ――マンホール蓋に飛散防止の対策は施され ているのでしょうか。 蓋が上に飛び上がらないよう、完全に開か ないマンホール蓋がすでに開発されています。 例えば蝶番みたいなもので蓋と枠に遊びを 設けて、蓋をガタガタ言わせながら中の空気 を抜くものや、もともと蓋に穴が開いていて そこから空気が抜けるものもあります。万が 一圧力に耐えられなくなった時でも、蓋が片 開きにならないようになっています。そうい う対策のおかげで蓋が飛散する事故は少なく なっています。 固着の恐怖 それでも怖いのは、何年か前になりますが、 蓋そのものではなくて、蓋を止めている金具 と一緒に蓋が飛散する事故がありました。新 しい災害です。ショックでした。その蓋はよ く分かっていないのですが、ガタガタして空 気を抜くタイプだったとすれば、蓋が固着し て最後の最後まで空気の逃げ道がなくなった のかも知れません。これが一番怖いことです。 そうなると蓋の外のアスファルトに亀裂がで きてでドーンと飛ぶ。 技術の進展が新たな事故を引き起こす 私はよくいろいろなものを壊します(編注: ご専門は材料工学)。破壊工学ですが、最後 の最後まで耐えた時の材料ほど怖いものはあ りません。もうこの世のものとも思えないよ うな破壊の仕方で、だから途中で中途半端に 破壊した方が被害は少なくて済みます。 今は技術が進んだおかげで、集中豪雨でこ れまでに経験してきたような事故は、だいぶ 減ってきました。しかし、技術が進んだために、 壊れにくく、頑丈になりすぎたために、また とんでもないことが起きるかも知れません。 また、腐食による蓋と枠の固着も危険です。 下水道(汚水)ではどうしても硫化水素が発 生するので、硫酸による腐食が進みます。蓋 は鉄ですから、腐食するだけどんどん固着が 進み、圧が逃げられなくなります。 事故防止技術の変遷 ――蓋の飛散防止には、固着させないことが 肝要ということですね。そのほかに、マンホ ール蓋の事故防止、安全対策を教えていただ けますか。 事故防止の変遷をお話ししますと、昔の蓋 は、蝶番もなくて、そのままペタンと置いて あるだけなので、飛んで行くこともありまし た。それは危険なので、蝶番で留める蓋が出 てきました。蓋は開くけれども飛んで行くこ とはありません。 その次には、片開きだとマンホールの穴に 空気圧で フタが飛ぶ 水圧で噴水 溺水トラップに落ちる 下水管 川・池 大雨の排水 大雨で下水管が雨水をさばききれなくなる と、水が噴き上がったり空気の塊が蓋を一気 に押し上げるエアハンマー現象が起きる危険 性が高まる。また道路が冠水すると20㎝で 底は見えなくなり、溺水トラップが発生する (斎藤秀俊教授作成)
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