Prologue 下水道事業とマンホール蓋における課題 10 2025 vol.14 G&U 2024年はゲリラ豪雨によるマンホール蓋 の飛散が世間の耳目を集めました。近年の、 豪雨の激甚化・頻発化のなかでマンホール蓋 にはどのような課題があるのか、また安全対 策は進んでいるのか――。水難学会の理事で、 マンホールに絡む水難事故研究の第一人者で もある長岡技科大大学院の斎藤秀俊教授にお 話を伺いました。 渦が人を集め、人を吸い込む ――近年、豪雨災害の激甚化・頻発化が顕著 になってきましたが、豪雨になると、マンホ ール蓋にはどのような問題がありますか。 一つはマンホールの蓋が完全に開いてしま うという問題です。豪雨で冠水した道路を歩 くと、そこには様々なトラップがあります。 その一つが蓋が開いたマンホールです。それ を知らずに近づくと、吸い込まれて事故にな ります。最近は少なくなりましたが、まだま だそのおそれはあります。 もう一つは、冠水した道路の蓋が開いたこ とで発生する渦です。子供たちが見てしまう と「あれ?何だろう」とつい近づいてしまう 可能性があります。吸い込まれる時の水の流 れは予想外に強く、水深が膝より下でも、水 の流れに後ろから足を取られて尻もちをつい て、そのまま吸い込まれてしまいます。 水が吸い込まれる様子を見てみたいという 好奇心から、本当に吸い込まれてしまうとい う危険性は、水難学会としてもこれが最もリ スクが高いと考えています。命に直結します。 私も研究所(G&U)でその渦を見ましたが、 あれは大人でも見たいと思ってしまいます。 危険です。 また豪雨という観点では、最近特に顕著に なってきた「エアハンマー」の問題です。マン ホールは坂道にもありますが、近年の豪雨で は、坂に、一気に、短時間に、もの凄い量の 雨水が流れることがあります。すると下水管、 雨水管でさばけなくなるから、管の中の空気 がどんどん上のほうに溜まっていって、マン ホール蓋を一気に押し上げます。これが「エ アハンマー」です。 長岡技術科学大学大学院 教授 一般社団法人 水難学会理事 斎藤 秀俊 氏 マンホール蓋の課題 近年の豪雨被害と対策 蓋の空いたマンホールへと水が 流れ落ちる様子(実験施設)
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