G&U技術広報誌vol.13

34 2023 vol.13 G&U 南部鉄器―盛岡と奥州水沢が二大産地 「南部鉄器」とは、「岩手県盛岡市および奥 州市で生産された鉄製のなべ類・鉄瓶・花瓶・ 風鈴・香炉など」(経済産業省東北産業局HP より)とされています。盛岡市と奥州市の水 沢地区が二大産地であり、歴史も異なります。 水沢地区で生産された鋳物は「水沢鋳物」 と呼ばれ、その歴史は今から900年以上前の 平安時代末期、奥州藤原氏の初代当主である 藤 ふじわらの 原清 きよひら 衡が、近江国(現在の滋賀県)から 鋳 い も じ 物師を招き入れたことに端を発します。 江戸時代には伊達藩の保護を受けて生産を 伸ばし、明治時代には東北地方や北海道まで 販路を広げて東北一の日用品鋳物の生産地に。 昭和に入ると軍需産業に転換して規模を拡大 し、産業用機械鋳物の生産も始まりました。 戦後、日用品鋳物の生産が復活してからは、 鋳物工業産地として全国的にも有名になりま した。 一方、盛岡南部鉄器は、江戸時代初期に盛 岡藩主の南部氏の保護を受けて広がっていっ たものです。南部鉄器の「南部」は盛岡藩の別 称、南部藩に由来します。 両地域の鉄器を「南部鉄器」と総称するよ うになったのは、1959(昭和34)年から。盛岡 ・奥州水沢の鋳物組合が共同で「岩手県南部 鉄器協同組合連合会」を設立し、名称を統一 しました。南部鉄器は、1975(昭和50)年に「伝 統的工芸品」として国の指定を受けています。 日用品鋳物を製造してきた及源鋳造 昭和40年代後半、ある出会いが転機に 及源鋳造㈱は1852(嘉永5)年、及川源十郎 鋳造所として水沢地区で創業しました。1947 (昭和22)年に法人化し、及源鋳造株式会社と なり現在に至ります。 水沢鋳物は、鍋や釜などの日用品鋳物を中 心に発展を遂げています。及源鋳造も及川源 十郎鋳造所時代から、ご飯を炊く「つば釜」、 及源鋳造 南部鉄器の伝統と革新 暮らしと鋳物 時流にあわせ鋳物の進化に取り組む老舗メーカー 及源鋳造㈱は、岩手県奥州市水 沢で1852(嘉永5)年に創業し、 約170年の歴史を有する老舗の 鋳物メーカーです。伝統的な南 部鉄器を製造し、技術を継承す る一方、現代的なデザインや新 技術の導入、海外輸出、オンライ ンショップや工場直営店の運営 など、さまざまなチャレンジを 続けています。これまでのあゆ みや、製品の魅力、新たな取り組 みなどについて、及川久仁子代 表取締役社長にお聞きしました。

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