31 2023 vol.13 G&U 硫化水素濃度の測定と合わせ、マンホール の腐食状況の調査も行っています。「下水道 管路施設ストックマネジメントの手引き」 ((公社)日本下水道協会)に基づき、腐食状況 のランク判定を行ったところ、最も腐食が進 行しているAランクが8.4%で、このうち約 70%が圧送管吐出し先のマンホールという結 果が出ています。 吐出し先から500mの地点でも高濃度 硫化水素のリスクは予測式超える箇所も 圧送管吐出し先に関しては、圧送が着水す るマンホールのみの硫化水素濃度を測定した ケースが多かった一方、ある事業体では、着 水マンホールから100m、250m、500m、1000 mの地点に、それぞれ測定器を設置しました。 「特徴的だったのは、吐出し先から500m離 れた地点でも最大50ppmを超える硫化水素 濃度が計測されたことです。硫化水素の影響 が及ぶ範囲は、『下水道管路施設ストックマ ネジメントの手引き』((公社)日本下水道協 会)の予測式を用いて計算するのが一般的で すが、この事例では予測式で得られた値より 広いことが確認されています。これは、吐出 し先から250mの地点までは更生管であった ため、硫化水素が管路に吸着されにくくなり、 さらに下流まで流れ込んだ影響だと考えられ ます。圧送管に関しては、吐出し先だけでな く、管種やマンホールの構造などによっては、 さらにその先でも硫化水素発生のリスクを考 慮する必要があると感じています(」大西主任) 一方、別の事業体では、臭気の指摘をきっ かけに測定器を設置したところ、雨水ますで 硫化水素が検出されました。この雨水ますは 圧送管吐出し先の合流管に接続され、腐食が 進行しており、硫化水素は最大で400ppmと いう高濃度が検出されています。合流管に接 続している場合、硫化水素の影響は雨水ます などにも及ぶ可能性が示唆された事例となり ました。 調査結果は「改正G-4」で参照される 令和5年5月、日本下水道協会規格「下水 道用鋳鉄製マンホール蓋」(G-4)が改正され、 防食性能が規定化されました。改正G-4では、 防食性能の試験を行う一般的な腐食環境を 「Ⅲ類」に適合する条件としています。これは 同社の全国一斉調査でⅢ類が94.2%と大部分 を占めていたことに基づいており、改正G-4 にも調査データを参照したことが記載されま した。 「調査が規格改正に役立ったことは、市民 の安心・安全な生活への貢献という点で非常 に良かったと思っています。自主調査は継続 しており、測定器の設置箇所は累計で142自 治体、28都道府県(令和5年8月末現在)にの ぼります。調査結果を踏まえ、事業体様に注 意喚起できる場面も増えていますので、今後 もデータの蓄積を続けていく考えです」(井川 課長) ■腐食環境の内訳 分類(平均硫化水素濃度)腐食環境分類の比率 Ⅰ類(50ppm以上) 0.6% Ⅱ類(10~50ppm以上) 5.2% Ⅲ類(10ppm未満) 94.2% ■腐食状況※の内訳 分類 腐食箇所の比率 Aランク 高 8.4% Bランク 25.2% Cランク 23.5% 異常なし 低 42.9% ※ ランク判定および腐食環境判定は『下水道管路施設ストックマ ネジメントの手引き』((公社)日本下水道協会)に基づく ▲管清工業・井川理課長(左)、大西浩介主任(右) 【腐食の程度】
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