G&U技術広報誌vol.13

30 2023 vol.13 G&U 平成27年の下水道法改正により、下水道管路 の腐食のおそれが大きい箇所は5年に1回以 上、点検することが義務化されました。これ に伴い事業体は、計画的な点検・調査の実施 を求められるようになりましたが、管路の腐 食は現場状況でばらつきがあり、対策が必要 な箇所の網羅が難しいという課題も抱えてい ます。こうした中で管清工業㈱は、「拡散式 硫化水素測定器」を用い、管路における硫化 水素発生状況の全国一斉調査を実施しました。 調査で得られたデータや知見について、同社 九州支店技術課の井川理課長と本社技術部技 術開発課の大西浩介主任にお聞きしました。 全国の硫化水素発生状況を一斉調査 80市町村に500台の測定器を設置 同社が調査を行ったのは平成30年の2~4 月。下水道管路において腐食のおそれが大き い箇所としては、圧送管やビルピットの吐出 し先、伏越しなどが知られています。しかし、 腐食を引き起こす硫化水素が実際にどのくら い発生しているのか、あるいは腐食はどの程 度進行しているのか、全国規模でまとめたデ ータは当時どこにもなかったといいます。 「法改正に基づき、管路の適切な維持管理 を進めるためには、まずは硫化水素の発生状 況や腐食の状況を把握する必要があると考え ました。当社では調査開始前に拡散式硫化水 素測定器を約50台保有していましたが、新た に調達して10倍の500台に増やし、それらを 全国80市町村の管路施設に設置して、自主的 な調査として実施しました」(井川課長) 設置箇所の内訳は、圧送管吐出し先のマン ホールが46%、ビルピット吐出し先下流部の マンホールが15%、伏越し下流部マンホール が10%。そのほか、下水の流速が速い箇所や 段差がある箇所など、硫化水素の発生が予測 される管路施設に重点的に設置したといいます。 腐食環境は「Ⅲ類」が約94.2%を占める 調査で得られた硫化水素濃度をもとに腐食 環境を分類した結果、Ⅰ類(平均硫化水素濃 度50ppm以上)は0.6%、Ⅱ類(同10~50ppm) は5.2%、Ⅲ類(同10ppm未満)は94.2%という データが得られました。 ▲ 約500台の「拡散式硫化水素測定器」(右)を硫化水素の発生が疑 われるエリアのマンホールやますに設置した ▲硫化水素測定箇所の分布(80市町村、26都道府県) その他29% 伏越し下流部 マンホール 10% ビルピット 吐出し先 下流部の マンホール15% 圧送管吐出し先の マンホール 46% ■設置箇所の内訳 Close UP Part 3 下水道管路の腐食実態調査と防食対策事例 硫化水素発生状況の 全国一斉調査事例 管清工業株式会社

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