G&U技術広報誌vol.13

29 2023 vol.13 G&U 鋼材を保護する目的、中塗りには上塗りとの 付着性を高め、膜厚を保持するとともに汚染 物質が下地に到達するのを防ぐ目的がありま す。耐候性を保持するため最後に上塗りを行 い、トータル130μm程度の塗膜厚を保持し ます。一方、厳しい腐食環境(塩害環境)の道 路橋では、重防食塗装系として、素地の粗さ と清浄度を高め、溶融亜鉛めっきと同じ特性 を持つジンクリッチペイントを下地に、トー タル250μm程度の塗膜厚で保持し、期待耐 用年数は30年です。 硫化水素の影響を受ける過酷な環境からマ ンホール蓋を守るためには、下地まで硫化物 が届きにくい膜で覆い、なおかつ道路橋と同 様か、それ以上の膜厚の大きい塗装が必要に なるでしょう。また、すでにそうしたことは 行われているとは思いますが、被覆の際には 表面を粗くする「ブラスト加工」を行うこと で塗装材の食い込みを良くし、振動などによ って剝がれにくくすることも重要になってき ます。 なお、金属材料が腐食した場合、その上を 被覆すれば腐食の進行を防げるのではないか という声を聞くことがあります。しかし、特 に下水道のような特殊な環境でつくられた錆 にはさまざまな残留物が含まれており、それ らを完全に除去しない限り、腐食は進行しま す。ひとたび錆の「根っこ」ができると対応が 難しくなりますので、事前に防食処理を行っ ておくことが重要です。 データベース整備の重要性 気候変動を考慮した腐食対策の見直しも ――金属材料を用いたインフラの防食を進め る上で必要なことなど、最後にメッセージを お願いいたします。 いつ、どのようなものを設置したのか、デ ータベースを構築していくことが大事だと思 います。そうしたデータベースがあれば、計 画的かつ効率的な腐食対策が可能になります。 P R O F I L E【さいとう・ひろし】 昭和53年3月日本大学大学院生産工学研究科博士前期課程修了。 同年1月(一社)日本防錆技術協会入社。平成27年6月より現職。 しかし一方では、近年の気候変動の影響で 従来の常識が通用しないということも起きて います。台風の進路がこれまでより内陸に入 り、今まで想定してなかった地域にまで塩害 の影響が及んでいます。温暖化で気温と湿度 が上がり、その影響で予想以上に腐食の進行 が早くなるという事例も発生しており、防食 業界でも非常に困っているところです。気候 変動を踏まえた腐食対策の見直しが、今後必 要になってくるでしょう。 このたびマンホール蓋の規格が改正され、 防食性能が規定されたことは、非常に大きな 意味があると感じています。性能試験に関し ても、下水道の特殊な環境に応じた方法が考 案されたと聞いています。せっかく新しい規 格ができたのですから、あわせてマンホール 蓋に関するデータの蓄積も進めていただき、 より効果的な腐食対策が進むことを期待して います。 ■自動車と道路橋の防食塗装 膜厚(μm) 0 50 100 150 200 250 道路橋 (厳しい腐食環境) 道路橋 (一般環境) 自動車 メタリックカラー

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz