27 2023 vol.13 G&U めることになります。老朽化や腐食への対応 が喫緊の課題となる中、すでに損傷が深刻化 し、機能不全に陥っている橋もあります。 鋼道路橋では、桁端部や継手部、排水装置 の近傍などが腐食しやすい部材です。トラス の格点部(部材が交わる部分)や箱桁の内部、 コンクリートの埋設部なども腐食することが ありますが、こうした箇所は橋の強度を保つ 上で重要なため、大きな損傷につながると非 常に危険です。部分的な補修での対応が難し い場合には、通行規制の引き金となってしま います。 道路橋は海や川など、水と接する場所にあ るケースが多いため、必然的に腐食しやすい インフラとも言えます。沿岸部では塩害が腐 食を引き起こす要因として加わりますし、ま た寒冷地では、塩化ナトリウムを含む融雪剤 が腐食を引き起こすこともあります。 近年の特徴的な損傷事例としては、建築設 備の給水管に使用していた電縫鋼管(鋼板を 管状に丸め、電気抵抗溶接したもの)の腐食 があります。電縫鋼管に関しては、溶接部が 溝状に腐食する事例が1970年代に多発したた め、1980~1990年代に対策技術が確立・普及 しました。これにより2000年代にはほとんど 腐食の事例が見られなくなったものの、2010 年代以降、再び発生するようになったのです。 これはコストダウンのために給水管を海外調 達したことに加え、調達側の技術者不足も影 響していると考えられています。また電波塔 などの鉄塔でも、腐食による損傷が問題にな っています。 酸素や水分、塩分から遮断する「防食」 被覆のほか材料置換や電気防食なども ――金属材料における防食技術には、どのよ うな種類がありますか。 金属は酸素や水分、塩分に触れると錆びる、 つまり腐食しますので、そうした環境から遮 断することが「防食」です。人間は寒いと服を 着ますが、それと似たことと言えるかしれま せん。 防食技術としては、まず「被覆」が挙げられ ます。金属被覆と非金属被覆に分けられ、金 属被覆にはめっきや金属溶射などがあり、非 金属被覆には塗装やライニング、化成処理、 あるいは各種合成樹脂やゴム、FRP、モルタ ルなどを用いるさまざまな手法があります。 耐食性の高い耐候性鋼やステンレス鋼など の別金属に交換してしまうのが、「材料置換」 です。気化性防錆剤などを添加し、腐食を抑 制する「インヒビター」という技術もありま す。また、「電気防食」には主に二つの方法が あります。一つは、被防食体より錆びやすい 金属(亜鉛、マグネシウム、アルミニウム)を ▲ 道路橋における鋼部材の損傷事例。左:桁端部、右:トラス格点部 (出典:国土技術政策総合研究所ホームページ https://www. nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0748pdf/ks074806.pdf) ■建設年度別橋梁数 (出典:令和2年版 国土交通白書) ンフラの増加 朽化インフラ 増加) は、その多く 降に整備され 設から50年以 合は加速度的 ある。このた 心や社会経済 ンフラの維持 に進めていく 2万の道路橋 設後50年を経 は、2019年(令和元年)3月時点では27%であったが、2029年3月には52% 予想されている(図表Ⅰ-2-1-11)。現在、全国の橋梁について、市区町村が管理 都道府県・政令市等が管理する橋梁が26%と、地方公共団体が全体の9割以上を 図表Ⅰ-2-1-11 建設年度別橋梁数 1915 1918 1921 1924 1927 1930 1933 1936 1939 1942 1945 1948 1951 1954 1957 1960 1963 1966 1969 1972 1975 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 2011 2013 2017 18,000 15,000 12,000 9,000 6,000 3,000 0 国土交通省 高速道路会社 都道府県・政令市等 市区町村 建設後50年を経過した 橋梁の割合(全体) 2019年度時点 2029年度時点 27% 52% (橋) (年度) 資料)国土交通省 ■ 地方公共団体管理橋梁の通行規制等の 推移(2m以上) (出典:国土交通省資料) 第 第第 将来 予測 され る 様 々 な 環境 変化
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