25 2023 vol.13 G&U 合はわずか1%ですが、土木は59%を維持費 が占めます」 優れた対策技術が腐食コスト低減に寄与 レベル向上へ今後も不断の取り組みを 利用技術の向上により、わずかな腐食対策 費でも対策レベルが上がり、腐食コストを大 幅に低減できるようになりました。耐食材料 やめっき・塗装、電気防食、それらを組み合 わせた複合防食技術など、防錆防食に直接関 わる材料・技術の開発だけでなく、モニタリ ングやシミュレーション、加工・製造技術と いった周辺技術の向上も、コスト低減に大き く寄与しています。 高度経済成長期から1990年代にかけて盛ん に整備された各産業界の設備やインフラ構造 物。これらの老朽化の最たる要因は腐食であ り、更新・メンテナンス時の投資を最小限に 抑制しつつ延命化を図っていくためには、今 後も新たな防錆防食技術・材料の開発に取り 組んでいくことが求められます。予防対応の 改善、腐食モニタリング・診断、補修技術、 寿命評価技術など、維持管理に関わる技術は これまで以上に重要性を増していくことが予 想されます。 「金属は腐食するのが当たり前であること を、皆さんに認識していただいた上で、腐食 をどう防ぐか、腐食したらどうするかを、広 く知ってもらいたいですね。最近はプラスチ ックなどで代替するケースも多いですが、私 自身は『鉄屋さん』ですから、金属が使われた ものの寿命を少しでも延ばす研究を、怠らず 続けていこうと思います。モニタリングなど も含め、まだ革新的な新技術は存在するはず です。繰り返しになりますが、技術さえあれ ば少ないコストでも防食レベルを大きく向上 できます。各分野でも引き続き、メカニズム の解明や新しい知見をもって、技術の向上に 向けた研究開発を行っていただきたいです ね」 ■腐食コストの概念図(出典:同) 費用 腐食対策レベル 腐食コスト 腐食対策費 腐食損失 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ P R O F I L E【しのはら・ただし】 東京大学大学院工学系研究科(金属材料学)修了、 工学博士。東京大学工学部助教授、横浜国立大学 大学院客員教授、国立研究開発法人 物質・材料研 究機構(NIMS)材料信頼性評価ユニットグループ リーダー、同腐食研究グループ特別研究員を経て 現職。腐食防食協会、日本鉄鋼協会の理事などを 歴任。金属腐食、大気腐食のエキスパート。
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