Close UP Part 2 鉄蓋の腐食メカニズムと金属材料の防食技術 24 2023 vol.13 G&U 上げると腐食対策費も増 えます。『腐食コスト』は、 どれだけ損失を出したか、 どれだけ対策に使ったか の合計ですから、グラフ に描いた実線のカーブの ようなイメージになりま す。腐食コストが最小と なるのはカーブのボトム 部分ですが、ある程度の 腐食損失も生じます」 つまり、この最小点を 含む「Ⅱ」付近のゾーン は「多少の腐食は許容し つつ、メンテナンスで延 命化する」最適な対策で あり、腐食損失がゼロに なる「Ⅲ」のゾーンは「腐 食させないようメンテナ ンスする」最適な対策を 行っていることを示して います。なお、腐食対策 が不十分であったために、腐食コストの大半 が直接的な腐食損失と見なされた第1回調査 時は「Ⅰ」の段階にあったと考えられます。 どのレベルまで防食性能を求めるのかは、 利用分野ごとにスタンスが大きく異なります。 「多少は腐食してもいいので、メンテで補 いながら長く使う分野もあるし、腐食して壊 れたら直せばいいという分野もあります。原 子力分野は、コストをいくらかけてでも限り なく腐食リスクをゼロにして、より高い安全 性の確保をめざします。高温で燃焼するボイ ラのように、今の技術では腐食を避けられな いものは、対策しながら少しでも長く使い、 駄目になったら交換。鉄塔や橋梁などもそれ に近いですね。最初のめっきや塗装が減って きて、錆びる直前や少し錆びた段階で塗り替 えて、それを繰り返しながら何十年も使い続 けます。同じ建設分野でも、土木と建築とで は考え方がまったく違います。建築は劣化し たら修繕するよりも壊して建て直す『スクラ ップ・アンド・ビルド』の発想。それに対して 土木は、整備した社会資本を直しながら長く 維持して使い続けようという考え方です。で すから、建築は腐食コストのうち維持費の割 ■Uhlig方式による腐食コストの変遷(出典:同) 1974年 1997年 2015年 腐食対策費(億円)割合(%)腐食対策費(億円)割合(%)腐食対策費(億円)割合(%) 1 表面塗装 18,695 72.7 29,593 64.4 24,925 57.7 2 防錆材 161 0.6 449 1.0 461 1.1 3 防錆油 156 0.6 637 1.4 1,897 4.4 4 表面処理 3,926※3 15.3 10,135 22.0 11,738 27.2 5 耐食材料 2,391 9.3 4,432 9.6 3,589 8.3 6 電気防食 158 0.6 217 0.5 243 0.6 7 腐食研究 215 0.8 416 0.9 299 0.7 8 腐食診断 ー ー 96 0.2 72 0.2 合計 25,702 100 45,975 100 43,224 100 比率 1 1.79 1.68 対GN(I 名目)※1 1.79% 0.85% 0.78% 対GNP(名目)※2 1.93% 0.90% ■Hoar方式による腐食コストの変遷(出典:同) 1974年 1997年 2015年 腐食対策費(億円)割合(%)腐食対策費(億円)割合(%)腐食対策費(億円)割合(%) エネルギー分野 593 5.6 4,568 8.8 8,022 12.1 運輸分野 1,940 18.3 5,703 10.9 5,997 9.1 化学分野 1,543 14.5 10,708 20.5 14,706 22.3 金属分野 226 2.1 194 0.4 699 1.1 機械分野 4,331 40.8 15,619 29.9 20,869 31.6 建設分野 1,991 18.7 15,366 29.5 13,139 19.9 通信分野 ー ー ー ー 2,624 4.0 合計 10,625 100 52,159 100 66,057 100 比率 1 4.91 6.22 対GN(I 名目)※1 0.75% 0.99% 1.27% 対GNP(名目)※2 0.70% 1.02% ※1 GN(I国民総所得):現在、GNPは撤廃され、同様の概念であるGNIが用いられている。 ※2 前回(1997年)の報告書による。 ※3 中小めっき会社の表面処理量(統計上、売上の60%) 1974年度 1997年度 2015年度 新設 117.092億円1) (85.9%) ー2) ー2) 更新 19.16億円3) (14.1%) 1978億円 (100%) 2515億円 (100%) 合計 136.25億円 1978億円 2515億円 比率4) ー 1.00 1.27 ■水道部門における腐食コストの変遷(出典:同) 1)建設費中の腐食対策費とした。 2) 新設費用の内、腐食コストは管の塗装費と考えるが、塗装費につい ては未算出である。 3)保守管理費とした。 4)1 974年度は算出方法が異なるため採用せず、1997年度を1とした。 ※( )内の数値(%)は当該年での合計に対する比率
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