23 2023 vol.13 G&U 式」という異なる2つの方法が用いられてい ます。 Uhlig方式は、生産・製造段階の直接的な腐 食対策費を単純に加算したもので、表面塗装、 表面処理、耐食材料、防錆剤など8項目を集 計しています。一方のHoar方式は、利用分野 ごとに詳細を検討し、腐食損失と腐食対策費 を積み上げる方法です。新設・新造時だけで なく、更新や修繕、メンテナンスの段階の対 策費も積算されている点が、Uhlig方式との 大きな違いです。 Hoar方式では腐食対策費が増加 メンテナンス段階に重点が移る 「今回の調査では、Uhlig方式による腐食対 策費の総額は、GN(I 国民総所得)の0.78%に あたる4兆3224億円、Hoar方式ではGNIの 1.27%・6兆6057億円となりました。前回と の比較では、Uhlig方式はほぼ同額で、Hoar 方式はやや増えています。国内経済が変換期 を経て安定期、成熟期に移行して、整備が落 ち着いた社会資本の腐食対策も、新設段階か らメンテナンス段階に重点が移っていること を表しています」 Hoar方式とUhlig方式の比(Hoar/Uhlig比)は、第1回が0.41、第2回が1.13、今回が 1.53と大きく増えてきていることも、転換期 以降にメンテナンスによる腐食対策へと急速 にシフトしていることを示しています。 近年は防錆防食技術のレベルが上がる 腐食コストパフォーマンスは確実に向上 近年は耐食性能の高い新材料や新技術の開 発など、防錆防食技術のレベルは着実に上が っていますので、投じる対策費が同程度であ っても、より高度な腐食対策ができるように なり、「腐食コストパフォーマンス」は確実に 向上していると分析しています。 「成長期に行った1回目調査では、腐食コ ストの多くを実際の腐食損失が占めていまし たが、その後、経済レベルが上がると、腐食 対策の意識が高まり『防食用の塗料をたくさ ん使おう。鉄の代わりにステンレス鋼を使お う』といった発想が出てきました。そして今 回の調査では、どの分野の分科会からも腐食 事故による損失額はほとんど報告されていま せん。今回は実質的に、『腐食事故による損 失を出さないためにどれだけ対策費をかけた かを調査した』と言った方が正確かもしれま せん」 調査対象の利用分野ごとに見ても、ほとん どの分野でメンテナンスに比重が移りつつあ ります。その代表例が、全国的にほぼ新設整 備が行き渡った水道分野。第1回調査では、 Hoar方式による腐食コストのうち更新時の 対策費の割合は14%でしたが、今回調査では 100%が更新に伴う費用となっています。電 力分野でも火力発電や原子力発電は100%が 修繕コストであり、水力発電も94%が修繕。 水道・電気にガスを加えたエネルギー分野全 体では、メンテナンスによるコストが88%を 占めています。 腐食を許容するか、ゼロリスクをめざすか 利用分野ごとに異なる対策の最適解 「腐食対策レベルを上げるほど、腐食損失 を減らすことができます。しかし、レベルを ■過 去2回(1974年、1997年)と今回(2015 年)の腐食コスト調査における、腐食コ ストの総額とGNIの変化(出典:『わが国にお ける腐食コスト(』腐食コスト調査委員会) 国民総所得,GNI(兆円) 腐食コスト(兆円) (1.60%) 0 100 200 300 400 500 0 2 4 6 8 10 600 1974 1997 2015 調査年度 GNI Uhlig方式 腐食コスト Hoar方式 (0.75%) (0.73%) (0.99%) (1.25%) (0.78%) ※( )内の数値は対GNI比
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