G&U技術広報誌vol.13

Close UP Part 2 鉄蓋の腐食メカニズムと金属材料の防食技術 22 2023 vol.13 G&U 金属材料が周辺環境の作用を受けて劣化や 損耗を生じる「腐食」。あらゆる金属にとって 不可避な宿命とも言える腐食は、金属製品・ 構造物の強度や品質の低下、短命化を招く大 きな要因であり、安全性や信頼性を揺るがす 腐食事故を未然に防ぎ経済的損失を抑えるた め、それぞれの産業分野において、適材適所 の防食技術、防食材料を取り入れた対応策が 講じられています。 2020年1月、『わが国における腐食コスト 報告書』というレポートが公表されました。 分野ごとに設けた15の分科会の委員100名が、 国内産業において腐食対策に投じられる費用 や腐食事故による損失を調査し、数年かけて 全体像を取りまとめた貴重な成果です。 この腐食コスト調査の概要とそこから得ら れた知見、これからの腐食対策のあり方など を中心に、調査委員会の委員長を務めた(一社) 日本防錆技術協会の篠原正氏に伺いました。 3期の経済情勢をカバーした世界初の調査 腐食コストを2つの方法で算定 前出の報告書にまとめられた腐食コスト調 査は、2015年時点のデータに基づき、(公社) 腐食防食学会と(一社)日本防錆技術協会が 共同で行ったもので、1974年の第1回、1997 年の第2回に続く3回目の実施です。各調査 時の日本の経済情勢に重ねると、1回目は設 備投資やインフラ投資が盛んに行われていた 「成長期」、2回目はバブル崩壊などの影響で ちょうど成長が頭打ちになる「変換期」、そし て3回目はリーマンショックや東日本大震災 のダメージも落ち着き緩やかな安定成長に入 った「成熟期」。腐食コストの調査は、日本よ りも早く欧米各国で行われていましたが、こ れら3つの経済状況(成長期、変換期、成熟期) で実施した調査は世界でも初めてのケースだ そうです。 「腐食コスト」とは「腐食事故による直接的 損失と腐食対策費の和」と定義づけられ、腐 食対策費の算定には「Uhlig方式」と「Hoar方 一般社団法人日本防錆技術協会 防錆技術学校 講師/博士(工学) 篠原 正 氏 金属材料における 腐食対策の 現状と今後のあり方

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