19 2023 vol.13 G&U 錆層には元々、接着剤のように金属同士を 固着させる作用はないはずなのですが、狭い 隙間に錆が溜まり、時間とともに結合力を強 めていくのでしょう。錆層の存在が固着の原 因であることは経験的には明らかなのですが、 その科学的根拠、環境条件や時間経過と固着 力の相関性などを明確化する定量的な研究は これまで行われていませんでした。そこで、 私どもは昨年から、固着メカニズムの解明に 向けた共同研究を、G&Uさんと一緒に始め たところです。その1年目の成果を、今年の 第60回下水道研究発表会で初めて報告させて いただきました。 初年度の研究では、マンホール蓋と同じ素 材の試験体と、実際のマンホール蓋を使って それぞれ腐食実験を行い、固着現象の再現・ 評価を行いました。試験体の実験では、2枚 の鋳鉄片を圧着させて、接触面に錆が生じて も全く動かないもの(位置固定)と、錆びると 1枚だけが自由に動けるもの(位置自由)の 2タイプのサンプルを用いて固着力を比較し ました。すると、多少のばらつきはありまし たが、位置固定タイプの方が、格段に固着力 が大きいことがわかりました。マンホール蓋 の強い固着は、受枠に圧着した狭い空間にで きる錆が要因ではないかという、事前の仮説 を立証する結果が得られました。一方のマン ホール蓋を用いた実験では、曝露日数を変え て腐食実験を行いましたが、時間経過ととも に固着力が強くなり、段差量も大きくなる状 況を定量的に把握できました。 今後は、試験環境をもっと現場の状況に近 づけた上で、さまざまなパラメータ設定によ り生じる差異などを、まずは明らかにしてい きます。そして、基礎的な固着メカニズムが わかってきたら次の段階として、どうすれば 固着を防げるかという方向に展開していきた いと思います。 ■試 験片を用いた実験で の固着力の測定結果 平均固着力(N) 0 50 100 150 200 250 300 位置固定 位置自由 ▲ 試験片実験におけるサンプル 固定方法の概略 ▲曝露後の勾配面と段差の様子 ■マンホール蓋の曝露日数と固着力の関係 固着力(kN) 10 0 20 30 40 50 60 0 20 40 60 暴露日数 ■マンホール蓋の曝露日数と段差量の関係 段差量(mm) 0 1 2 3 4 0 20 40 60 暴露日数
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