13 2023 vol.13 G&U まず、防食性能を客観的に試験・評価する 方法を検討する上で、参考にする指標を決め ました。これについては、下水道界で広く認 知されている『下水道コンクリート構造物の 腐食抑制技術及び防食技術マニュアル』(地方 共同法人日本下水道事業団編)に準拠するこ ととしています。 次に、防食性能のターゲットを定めました。 マンホール蓋の防食では、樹脂塗装や犠牲防 食などによる表面処理を行いますが、蓋の厚 みが増しますので、開閉性などの機能と両立 させることを考慮しなければなりません。下 水道施設の腐食環境の分類は、環境が厳しい 順にⅠ類、Ⅱ類、Ⅲ類とあり、むやみに過酷 な分類をターゲットにすると、製品として成 立させるのが難しくなるわけです。そこで今 回の改正では、「管渠内の腐食環境の約95% はⅢ類」とする論文※データを参考に、防食性 能の試験を行う一般的な腐食環境を「Ⅲ類」 に適合する条件としています。 試験方法に関しては、日本下水道協会規格 であることを踏まえ、特殊な機材などを用い ず、下水道協会の認定工場で実施できること を前提としています。先に述べたように試験 方法については『防食技術マニュアル』をよ りどころとしましたが、マンホール蓋に応用 するためには、様々な面からの検討を重ねま した。 なお、一般の蓋と防食蓋は、製造や納入、 施工・維持管理において混同されないよう、 「表示」という項目で「防食性能を有するマン ホール蓋であることを目視認識できること」 という条件が規定されています。 「本編試験」と「参考試験」を記載 ―G-4で示された「本編試験」と「参考試験」 の位置づけについて教えてください。 G-4は、強制力がある「本編」および「附属書」 と、「参考資料」で構成されています。今回は 附属書において、防食表面処理の性能を評価 する試験方法を規定しており、これがいわゆ る「本編試験」です。『防食技術マニュアル』 に準じて鋳鉄板の供試体(試験を行う部材) をpH1の硫酸水溶液に浸漬し、目視で赤錆の 発生を確認して劣化を判定します。 これに加え参考資料では、「使用環境を想 定した防食性能試験」が記載されました。こ ちらが「参考試験」です。マンホール蓋は維持 管理上、どうしても開閉が必要になりますの で、開閉作業を想定した操作で生じた傷に対 する、防食性能の試験方法となっています。 さらに腐食進行状態を確認するためには、赤 錆発生の目視確認に加え、供試体から溶出し た鉄イオン量で評価するという、新規性・独 自性の高い方法も記載されました。基準値の 考え方などは今後さらに検討が必要であるた め、今回は参考試験という扱いになりました が、使用環境を想定した試験方法が記載され た意義は業界としても大きいと考えています。 ▲ G-4の[参考資料 4]に「使用環境を想定した防食性能試験〈参 考〉」が示された ※「硫化水素発生状況の全国一斉調査事例」(管清工業㈱ 井川理、大西浩介、第55回下水道研究発表会)
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