G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

4 2022 vol.12 G&U ブックエンドができるまで 意匠上の主役として用意した、直径約10セン チ(95×75×25mm)のアンモナイトの化石。 これをターンテーブルに載せて、光学式の3D スキャナ( )でさまざまな角度からスキャニ ングし、全周分のデータを合成して全体の形状 データを取得します( )。その一方で、L字状 の台座部分のデータは、3D-CAD「Pro/E」でゼ ロからモデリングしました。 これら両方のデータを、3Dモデリングソフ ト「F フリーフォーム reeform」に取り込んで、台座側面のスロ ープにアンモナイトの半身を埋め込むように一 体化( )。Freeformを扱う特殊なペン型の専用 デバイスは、画面上でモデルにタッチすると、 実際に触れているかのような触感が手に伝わる のが大きな特徴です。まるで粘土細工を指先で 作り込むように、モデルを削ったり伸ばしたり、 複雑な有機形状を直感的にペン先で表現できま す。この操作性を活かして、発掘現場の土に見 立てたアンモナイトの周囲に、不規則で微細な 凹凸を無数に掘り込んでいきました。 さらに、3Dスキャン時のノイズのレタッチや、 エッジの鋭い台座のコーナーの面取りなども Freeformの中で編集し、最終デザインのデータ を仕上げました( )。 従来の鋳物づくりのプロセスにおいて、2D 上での設計では、複雑な形状を再現することが 困難でした。こうした3D技術により、鋳物の表 現の幅が大きく広がり、リアルさを追求した鋳 物づくりが可能になったのです。 そして、仮想上の数値データに従って、現実 のオブジェクトをつくり出すのが3Dプリンタ ( )。溶けた樹脂を固めながら積層させたブッ クエンドの原型は、9時間ほどの待ち時間で自 動的に造形されました( )。これまでは、熟練 の職人が木を削りだして、一つ一つ原型を作成 していましたが、3Dプリンタを使用することで、 設計図通りの理想の形を、短時間のうちに自動 で出力することが可能になりました。 この樹脂模型をもとに鋳物砂を固めて鋳型を つくり、溶湯(高温で溶かした鋳鉄)を注いで 成型すると、重厚な趣きのブックエンドが完成。 再現性の限界に挑んだディテールと、鋳物独特 の朴訥な風合いが重なり、静謐とした書斎空間 にひときわ存在感を際立たせる造形美を織り成 しています。 Prologue ▲鋳物製品設計のプロセス 従 来 今 回 トレース 型製作 設計 鋳造 (原型を砂に埋 めて固め、鋳型 を作成し、溶け た鉄(溶湯)を 流し込んでつく る) 加工機を用いた製作で は、繊細な形状は難し い。複雑な形状を再現 したい場合は熟練技術 者(匠)が木を削りだ して手作り 3D プリンタにより、 設計図どおりの型を出 力可能 【全体】 3D-CADを使った設計 【細部】 ヴァーチャル技術(モ デリングソフト)を用 いて、PC 上で粘土彫 刻のように質感や細部 を再現可能 3D スキャナを使い 複雑な3次元形状を トレース 形状が複雑なため 3D モデリングが困難 (リアルな形状の再現) 2D-CAD で理想の形 状の値を入力して設計 (鋳物の原型となる型)

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