34 2022 vol.12 G&U 馴染みのある光景 下水道の災害支援の現場と同じだ―というの が私の正直な第一印象でした。 令和3年7月1日に日本下水道事業団から現在 の職場に異動し、そのころすでに全世界を震撼さ せていた新型コロナウイルス感染症と対峙するこ とになった時のことです。各省庁から大勢の人が 集められ、その時々に最善と考えられる対策をと り続ける職場のさまは、馴染みのある災害対策本 部で見た光景そのものでした。 早いものでそれから約1年が経ちますが、今で もその印象ははっきり覚えていますし、常にその 心構えで行動を心がけています。 その後の新型コロナにまつわる様々な動向は、 連日ニュースで取り上げられているので、今さら 触れることはしませんが、下水道しか知らなかっ た私にとって、新型コロナ対策で得た経験は、専 門的なことはほとんど理解できないとしても、こ れからの私にとって、あるいは下水道界にとって 役立つことはあると思います。 全体像を示し、関係者間で共有して対応 新型コロナ対策で肝要なのは、全体像を示すこ とです。下水道で言えばマスタープランの作成や、 災害時の復旧工程を示すようなものでしょうか。 令和2年4月に日本で初めて緊急事態宣言が発出 されましたが、ウイルスの正体も分からない中で、 当時の安倍内閣の下、手探りで対応を進めていた 時は、人気タレントが亡くなるなど社会的な危機 感の広がりを受けて、医療体制の確保や飲食やイ ベントの自粛要請がメインでした。やがて菅内閣 になり、ワクチンや医薬品の開発が進んでくると、 今度はワクチン接種が強力に推進され、さらに岸 田内閣になり、ウイルスの特性が明らかになって くると、高齢者施設や保育園等でのクラスター対 策や経済とのバランスも視野に入れた全体を俯瞰 した対策がとられるようになってきました。 下水道の災害でも被害状況が不明な間は対応が 難しくても、調査が進み事態が明らかになるにつ れて、復旧工程や支援体制など全体を見た対応が 必要になってきます。同じように、新型コロナ対 策でも未知数を許容しつつ、できるだけ全体を見 据えた対策を立案することが非常に重要なのです。 下水道でも、将来的に様々な災害が想定されう ると思います。通常の地震や洪水であればマニュ アルも整備されていますが、首都直下地震や東南 海地震、富士山などの火山災害など前例のない大 災害はいつ起こるのか全くわかりません。そのよ うな場合にも、新型コロナ対策で実施されている、 常に全体像を示し、関係者間で共有して対応を進 めることは重要な考え方となるでしょう。 求められるトップマネジメント 重要事項として2つ目に挙げたいのは、意思決 定プロセスです。新型コロナ対策では、首相をト 新型コロナ対策と 下水道 内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室 参事官 那須 基 ▲筆者の職場。新型コロナ対策の全てがここで決定されている Column [コラム]
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