27 2022 vol.12 G&U して各事業体における点検・調査計画や改築計画 の策定・検討を行うことができます。健全率予測 式は、国総研が2013年に初めて公表して以降、各 種マニュアルへの掲載を経て、事業体のストック マネジメント実施に欠かせないツールとして活用 されてきました。 前回(2017年)の更新から4年が経過し、大幅 なデータの追加ができたことから、データベース と同様に更新を行い「下水道管きょ健全率予測式 2021」として2021年6月に公開しています。今回 公開した健全率予測式は、2017年公開版から約18 万スパンを追加し、約46万スパンのTVカメラ調 査結果(鉄筋コンクリート管:約31万、陶管:約 11万、塩ビ管:約2万)を基に構築しています。 現状、点検・調査データの蓄積が少ない事業体 においても、健全率予測式を活用することで、管 きょ全体のマクロな劣化状況の把握や将来的な劣 化進行状況の予測を行うことが可能となり、点検・ 調査優先箇所や改築需要量予測の検討、事業費の 平準化を図ることができます(図4)。 なお、現在、公表している健全率予測式はあく まで全国の調査データを包含したマクロ的なもの です。管きょの劣化状況はそれぞれの事業体にお ける施工条件や当時の技術基準によって変わって くることから、各事業体において調査データを蓄 積し、独自の健全率予測式を構築して、より精度 の高い予測を行っていただくことが望ましいと思 っています(図5)。 予測式やデータベースで事業持続性の確保を 今後は精度向上や、調査機器等の研究も推進 ――最後に事業体や民間企業へのメッセージをお 願いします。 私自身、昨年度まで岡山市(下水道河川局)に 出向していました。事業体の皆さんが管路の維持 管理に日夜苦労されていることに対し、大変、頭 が下がる思いです。国総研での研究を通してなん とかお力になれればと思っています。今後は大都 市だけでなく比較的中小規模の事業体においても 管きょやマンホール蓋の老朽化が進んでくること が予想されます。これらの劣化については、場合 によっては人命に関わることから、重要な問題だ と認識しています。 限られたヒト、モノ、カネの制約の中で今後も 下水道サービスの持続性を確保していくためには、 維持管理情報等を起点としたマネジメントサイク ルの構築は必要不可欠です。今回ご紹介した下水 道管きょ劣化データベースおよび健全率予測式は そのための一助となるものですので、事業体およ びコンサルタント業務に携わる民間企業におかれ ましても、ストックマネジメント計画の策定等に ご活用いただければと思います。 下水道研究室では今後も管路のマネジメントサ イクルの構築に向け、健全率予測式の精度向上や 管きょ内調査機器等に関する研究を行っていくこ ととしています。特に塩ビ管については、比較的 新しい材料であることから基となるデータ量が少 ないのが現状です。事業体の皆様におかれまして は、引き続きデータの提供をお願いします。 ――ありがとうございました。 P R O F I L E【すえひさ・まさき】 平成18年国土交通省入省。平成24年7月から27年3月まで国土技術政 策総合研究所下水道研究室に研究官として配属され、管路のストック マネジメント等に関する研究業務に従事。その後、環境省水環境課課 長補佐、本省下水道部下水道企画課課長補佐、流域管理官付課長補佐、 岡山市下水道河川局次長を経て、令和4年4月より現職。
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