G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

14 2022 vol.12 G&U Close UP Part 2台帳システムの構築に向けて 紙から電子データへ 瞬時の改善が可能に 技術継承や職人技への依存解消にも期待 令和3年9月に省庁横断的な組織としてデジタ ル庁が設置されました。主に法律上の書類や手続 きを電子化し、齟齬や重複がないよう共通化する ことが目的です。デジタル化は世界の潮流です。 どちらかというと日本は遅れていましたが、紙か ら電子認証へと世界が大きく舵を切ったことで、 日本の事業体や企業もそうした方向に進み始めま した。一方で、東日本大震災や近年の豪雨被害を 受け、災害時にいかに迅速に情報を伝達し、共有 化するかという課題にも、国を挙げて取り組んで います。こうした背景や流れを踏まえ求められて いるのがDXであり、好む・好まないにかかわらず、 避けては通れない取り組みだと考えています。 DXで最も注目しているのは、電子データで編 集や上書きが可能で、瞬時に改善できるところで す。紙の書類や判子がこれまでのならわしだった 上下水道の事業体にとって、非常に画期的なこと です。かつて上下水道部署の執務室には山のよう に紙が積まれてありました。最も多かったのは図 面です。特に水道事業の場合は、末端給水の屋内 配管まで行政側が把握する必要があり、行政手続 きの書類なども日に日にたまる一方でした。これ らがすべて電子データに変換されれば、日常業務 の効率化や住民サービスの向上につながるはずで す。実際、台帳等を電子化した事業体からは作業 時間が1/3や半分になったとの声も聞かれます。 DXは技術継承でも効果が期待されます。上下 水道事業では技術が人に大きく依存しているとい う特徴があるほか、たとえば水道事業体の職員の 年齢構成は50代が約1/3を占めており、団塊世 代以降のその次の世代の大量退職に伴う技術の継 承が大きな課題となっています。ところがDXに より、これまで特定の人間しかできなかった職人 技を誰でもデータに基づいて把握・分析し、再現・ 改善できるようになります。的確なオペレーショ ンなどにより、インフラの最適化を図ることも可 能です。 しばしば事業体の人からは「DXと言われても よく理解できない、もっと端的に説明してほしい」 と言われます。私は「人がやっていたことを多く のことがコンピューター上でできるようになる」 水道の基盤強化に 向けたDXの推進 東洋大学大学院 経営研究科客員教授 (東洋大学 名誉教授) 石井 晴夫 氏 台帳の電子化をベースに、共通化・標準化し たデータを施設更新や料金徴収、広域連携な どあらゆる業務に活用する取り組みが水道分 野で行われています。こうした「水道DX」に 実証段階から関わってきた東洋大学大学院経 営研究科客員教授(東洋大学名誉教授)の石 井晴夫氏に、お話を伺いました。 Interview 2

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