G&U技術広報誌vol.12 「インフラメンテナンスを変えるDXの波」

9 2022 vol.12 G&U 存在が求められます。 注意しないといけないこともあります。集めた データをAIに放り込めば、回帰式をつくって簡単 に答えを得られるようにはなるでしょう。しかし、 そうしたシステムに頼り切ると、どういうメカニ ズムで答えが導き出されているかがわからなくな る可能性があります。いわゆるブラックボックス 化のリスクです。たとえばAIがお医者さんの代わ りをすべてできるかというと、やはり対面を組み 合わせないと患者さんには信用されません。下水 道の場合も同じで、データ的なオペレーションだ けではなく、下水道事業そのものを熟知している 必要がありますし、フィールドでの検証も当然続 けなければなりません。 DXの「目的」を意識する DXの「定量」と「定性」についても触れておき ます。スマート農業の例で言うと、自動化による 効率性アップは定量的な効果、生活が豊かになる ということは定性的な効果です。私は定性的な効 果のほうが大事であり、これを実現するための手 段として定量的なものがあると考えています。定 量と定性は、「目標」と「目的」の違いと似ていて、 定量的なことは目標、定性的なことは目的に近い イメージかもしれません。「仕事の効率を上げた い」ということは定量化できる「目標」ですが、「健 康になりたい」「幸せになりたい」といった「目的」 は定量化することができません。 効率化や自動化といった側面が強調されるDX については、その導入に懐疑的な人もいます。し かし、先に述べた「目的」の話は人間の本質的な ところに関わってくるため、そうした人も共感で きるはずです。DXが広く受け入れられ、持続的に 使われるためには、この目的の部分を常に意識し ていくことが必要だと考えています。 市民科学的な発想でのデータ収集も DXには、市民科学との相性が良いという特長 もあります。市民科学は、大学や役所などが自分 たちだけではデータを集めきれないため、一般の 方の力を借りるようになったことから始まりまし た。最近ではアプリなどでデータを登録し、それ らが共有される仕組みが広がっています。有名な のは渡り鳥の研究。一般のバードウォッチャーが 登録した観察データが、渡り鳥の生態解明に活用 されています。 マンホール蓋は膨大な数が設置されていますが、 下水道施設では珍しく、地上から見えるというメ リットを持っています。その点では市民科学的な 発想でいろいろな人に協力してもらい、DXを使 ってデータを集めることがやりやすいかもしれま せん。マンホール蓋の老朽度合いや危険性が誰に でも簡単にわかるよう、見える化することもでき ると思います。専門家でないと、あるいは点検し てみないと把握できないのでは、せっかくのメリ ットを活かしきれていない気がします。「見える」 という点で、マンホール蓋は情報発信にも非常に 向いているインフラだと思います。たとえばDX を使ってマンホール蓋が担う役割をPRすること によって、その価値を高めていくことなども可能 ではないでしょうか。 この業界を“カッコ良く”しよう 下水道の分野でDXを推進することによって、 この業界が“カッコ良く”なる気もしています。 下水道の仕事は過酷な環境が多く、職人気質の業 界というイメージも根強い。しかし、人手不足とい う問題もありますので、たとえばAIでできること は任せてしまうべきです。業界のイメージをスマ ートに変えていくことは、リクルーティングという 点でも重要なことだと言えます。これはある媒体 で書いてお叱りを受けたことではありますが、「プ ールサイドでカクテル片手に○○を見ながら下水 道管理をする」といったことも、夢ではありません。 求められているのは、下水道を含めた水業界の“ト ランスフォーメーション”です。 P R O F I L E【かとう・ひろゆき】 早稲田大学大学院修了後、昭和61年建設省下水道部に入省。滋賀県 下水道課長、日本下水道事業団計画課長、国土交通省下水道部下水 道事業課町村下水道対策官、同下水道事業調整官、同流域管理官、 同下水道事業課長などを歴任。(公財)日本下水道新技術機構・新 技術研究所長、㈱日水コン・技術統括フェローを経て、令和2年4 月より現職。昭和35年横浜市生まれ。 D X 下水道への 導入 その価値と目的

RkJQdWJsaXNoZXIy NDU4ODgz